029 《徹底研究》サラリーマン諸君の悩み100
出典:現代 六月号 昭和50年6月1日
私の悩み
 ■社内報でにらまれて 左遷された私
三人のスタッフをひきいて、社内報の編集を三年やってきました。内容は秘書課長立会いの編集会議で決定しますが「ちょっと一言」のページは私たちにまかされていました。
 私がそこに「管理職はゼイタク病」「セールス残酷物語」「ずさんな製品管理」などのコラムを載せたところ、重役に呼びつけられ、突然、岩手県宮古市の販売店に転勤を命じられたのです。
 今はクモの巣だらけのうらぶれた事務所でガックリ。
 妻子や母は東京に置きっぱなしで、何をやる気もありません。
回答
  森 敦 (作家)
 解決の道は、この際キッパリ会社をやめ、社内報の編集に似た仕事をさがすか、あるいは宮古でこれまでの二倍、三倍の努力をして仕事に励むことです。
 あなたは宮古を田舎都市というが、住めば都、宮古のいいところを見つけたらどうですか。ぼくは全国のいろいろなところに住みましたが、どこもそれなりに風情があり、人情があっていいものです。しばらく宮古でゆっくりするのもいいし、そのまま宮古にうずもれてもいいじゃないですか。それも一つの人生です。東京だけが住むところじゃありません。
 社内報の編集だけが男の仕事じゃない。この際、一日も早く妻子を宮古へ呼んで、のんびりやったらどうです。何事も経験ですよ。どうしても宮古に住むのがイヤなら、会社をやめるしかないけれど、転職というのは楽じゃないですよ。
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