031 ネコのここが大好き
出典:週刊読売 六月二十一日号 昭和50年6月21日
 ぼくは、猫には昔から大変関心があって、猫のことを書こうと思ったこともあります。
田舎にいたときは、ぼくがジッと座っていると、猫が寄ってくる、六匹も七匹もね。それにカツオブシなんかあげちゃあ、よく観察したものです。
 見れば見るほどエライ動物ですね、あれは。人間社会にこれほど接近して生活しているのに、少しも人間に慣らされず、こびへつらわず、自分の本性を守り通している。
犬なんてのは、ちょっと甘くすると、もうシッポふって甘ったれてくる。野性味も本性もあったもんじゃない。
 その点、猫は猫なで声を出して、まんまと家の中に入り込み、住みついてしまう。それでいて孤高を失わず、野性を秘めている。これは、よほど意志が強くないとできませんね。
 それと、目的意識がはっきりしていることです。この家に住もうと思ったら絶対に住みつくし、ネズミを捕ろうと思ったら、穴の前で何時間でもジッとしている。闘うとなったら、相手がどんなに大きな犬でも全力で攻撃する。攻撃力のすばやさは、犬なんか問題外で、まさに野性の魅力です。犬なんか、デレッとしちゃってどうしようもないね。
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