071 小説も人生も逆転発想 森敦(作家)
出典:Oh!9月号 昭和53年9月1日
 糸川英夫さんの『逆転の発想』の続編で、私のことを取り上げているらしいのですが、いったい何について書いているのか私は知らんのですよ。でも、作家はいつも逆転発想はしているのですよ。A、B、Cの3人の人物を設定して書くばあい、Aから見た目で書くか、B、Cから見た目で書くかで、同じ世界なのに、全く違ったものができ上がります。私はラジオやテレビで人生相談をやっていますが、これにしても、私の立場で何をいっても、相談者は納得してくれない。やはり、相談者の身になって考えてやることが大切です。これだって逆転発想でしょう。私は、作品ではなく、人生を切り換えることでやってきました。放浪していても10年たったら働こうと決意して、その時がきたらぱっと切り換えて仕事をしました。放浪という遊びと金のために働く勤めとは全く違ったものなのに、何やら真理を求めるという点では通じているところがあります。
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