025 メモ
出典:サンケイ新聞 昭和49年2月10日(日)
 ◇第70回芥川賞授賞式 六日よる東京・新橋の第一ホテルで開かれた。同賞史上の最年長授賞者、「月山」の森敦氏(六二)は、黒背広に白のタートルネック姿で「これぐらいの年になると、もういいものを書けといわれても無理だけど、悪いものを書けといわれても、ある程度のものは書く」と“大作家”らしいあいさつ。一方、三十六歳、元自衛隊員の野呂邦暢氏(「草のつるぎ」)は、「こんごいいかげんな作品を書きたくないと思っている」と、背筋を伸ばしたあいさつだった。
 審査員を代表してあいさつに立った安岡章太郎氏は「本来は、森先生というべきなんだろうな」と頭をかきながら、「『月山』は、おでんにたとえると、中までツユがしみこんでいる作品。野呂さんは、何度も芥川賞を落された作家だが、今回はナイーブな感受性が出ていた」と二人の受賞をたたえていた。
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