062 伸び伸び 明るい絵 ねむの木の子どもたち美術展
出典:毎日中学生新聞 昭和55年8月9日
 どこにこんなすばらしいエネルギーがひそんでいるのだろうか──。体の不自由な子が描いたとは思えない伸び伸びとした作品三百点を飾った「ねむの木の子どもたち美術展」が、八日から東京・池袋の西武百貨店八階のスタジオ二〇〇で開かれている。
 同展は宮城まり子さんが監督・製作した三作目の映画「虹をかける子どもたち」(九月五日まで、東京・神田の岩波ホールで上映中)の主役である原画を紹介したもの。「ねむの木学園」の子供たちが、バス旅行、汽車、草花といった日常生活の体験や、ミュージシャン、カウボーイなどあこがれの対象を描いたものなど、まじりけのない明るい色彩で表現されている。
 どの絵もフェルトペンで丹念に描かれ、生き生きと空想力に富み、子供たち一人一人が絵を通して見る者に語りかけてくるようだ。
 先月、ツイ間板ヘルニアの手術を受け入院中の宮城さんも車イスで会場に姿を見せ「映画を見た人が子供たちの原画を見たいのではないかと思うし、展覧会を見た人が映画も見てくれるのではないかと思って開催しました。みんな“すばらしい”と感激していました。子供は愛情を傾けるだけで、こんなすばらしい絵がかけるのです。親や子はもちろんですが、多くの若者たちに見てもらいたい」と語っていた。
 また、応援にきた作家の森敦さんも「一人でも多くの人にこの展覧会を見てほしい。映画は、三、四回見たが、その度に違った感動を受けました。ねむの木学園の子供と一緒にいると、障害があるとは思えないふん囲気がある」と語っていた。
 同展は入場無料で十三日まで開かれ、その後は岡山市で開かれる予定。これらの絵の中の十三枚が来年の国際障害者年の国連のカレンダーに使われる。
 ねむの木学園は、女優の宮城まり子さんが昭和四十三年に静岡県に設立した身体不自由児療護施設で、現在、四歳から二十五歳まで四十八人が障害にもめげず明るく生活している。
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