068 森敦さんが献句
出典:伊勢新聞 昭和58年8月20日(土)
 【上野】ことし俳聖・松尾芭蕉翁の二百九十回忌を迎え、盛大な俳句の祭典・芭蕉祭を計画している上野市丸之内、芭蕉翁記念館(山本茂貴館長)に、十九日、芥川賞受賞作家と知られる森敦さん(七一)=東京都新宿区市谷田町=から、芭蕉翁をたたえる自筆の俳句一首が届いた。同館ではさっそく表装して、ことし十月十二日の芭蕉祭に公開することにしている。
 作家の森さんは、先輩作家で、上野市出身の故横光利一らの指導で俳句を学び、最近は近代俳句の祖、俳聖といわれる芭蕉翁の研究も行っている。また、芥川賞受賞作である「月山」を書き、俳句に強いところから、ことし六月から五回にわたってNHK教育テレビの教育セミナー・ふるさと歴史紀行「奥の細道」に出演、芭蕉翁がたどった最上川に沿った奥の細道を説明した。
 この放送を見た山本茂貴館長の芭蕉文学講座の受講生たちは、近く奥の細道の講座に入るため「森先生になにか記念の品を…」ということになり、山本館長が森さんに芭蕉に関する記念品の寄贈を申し入れたところ、心やすく引き受けてくれたため、このほど、長さ百三十五センチ、幅五十六センチの和紙に自筆の句一首が送られてきた。
 送られてきた俳句は、「蕉翁の道尋ね終りて湖畔に宿す 森敦」と前詞に書いて「子等の漕ぐ 声雲に消え湖となる」との句を力強く書かれてある、山本館長は「森先生は俳句に関心を持ち、芭蕉翁についてもよく研究しておられるお方。さっそくの願いを聞いてくださった。芭蕉翁の偉大さをありありと詠んだよい句で記念館の宝物となる」と大喜びしている。
 同館では、十月十二日に同市で行われる第三十七回の芭蕉祭までに掛け軸にして公開するとともに、森さんを芭蕉祭に招待することにしている。
↑ページトップ
森敦関連記事一覧へ戻る
「森敦資料館」に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。