072 ひと 幻の名作、相次ぎ刊行
出典:読売新聞夕刊 昭和59年8月20日(月)
 作家の森敦さん=写真=のまぼろしの名作が相次いで本になった。「もくえん(杢右ヱ門)の木小屋」(成瀬書房、限定版で三万円)には表題作と「アド・バルーン」の二作が収められ、いずれも三十年前の放浪時代の小説。もうひとつは「意味の変容」で、森さんによると、「小説と数学と哲学をチャンポンにしたような」文学論。来月筑摩書房から出る。
 「だれにも理解してもらえそうにないので本にしなかったが、年をとったせいでしょうか、出せという好意に甘えました」という。
 七十二歳の森さん「最近は毎日がなんだか愉快でしかたない」そうだ。あまり楽しいので心配になり医者に相談したら一笑に付された。「悟りなのか、老モウなのか、わかりませんねえ」。仕事は昼間に済ませ、ビールと水割りの晩酌は欠かさない。
↑ページトップ
森敦関連記事一覧へ戻る
「森敦資料館」に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。