019 文壇10大トピック  山本容朗
出典:週刊読書人 昭和49年12月30日(月)
 今年もはや年末回顧をする時になった。「小説は不作だった」という「文学回顧」もあったが、“文壇トピックス”は、不作ではなかった。平均をやや上回るといっていいだろう。
 昨年と同じく最高を10点、10位を1点とする採点制にし、編集部(3名)と私が点を入れたから、最高点は40点である。
 1位から次点まで票が割れて、まさに大熱戦だが、これ以外では「山太有三氏の死」、「“韓国詩人金芝河氏らを救え”と、宮原昭夫、李恢成氏らのハンスト」などがあげられた。
 @『月山』の森敦氏61歳で芥川賞。
 ことしは前半、森敦現象が文壇を圧し、後半、野坂昭如氏ダケがモテたといった印象が強い。そして、なかに入ったのが、“ペン騒動”。といったところが、文檀トピックスの見取り図だろう。
 それにしても、森敦氏の年齢よりはずっと若々しいデビューぶりは、驚きの一語であった。新聞は久々の“大物登場”と争って書いた。授賞式で、「書く気はなかったが、古山(高麗雄)さんにタブらかされたようなもの。いいものを書け、といわれても書けないが、ある程度のものは書けますよ」と右手をあげてXサインをしたこの大物。とにかく、森敦、森敦でした。4月からNHKのショー番組のインタビュアーをするやら、週刊誌の連載対談のホストをするやらで活字以外でも大活躍。だが、テレビは台本なしで大丈夫だといっていた森敦氏、心配はフロだけだった。それは「三月や半年、フロに入らなくても平気」といっていたこの人、だが、テレビ出演となると、そうもいかず、気になりだした。「いつフロに入ろうか」──これが、この大物の心配だったよし、面白い。
(以下略)
 
@『月山』の森敦氏、61歳で芥川賞
A理事の韓国発言で、ペンクラブ大揺れ
B野坂昭如氏、東京地方区で参議院選に出馬、
 52万7214票で落選
(以下略)
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