046 森 敦著 『わが青春わが放浪』 |
出典:北海道新聞 昭和57年8月10日 |
六十九編から成る随想集。新聞・雑誌に載せたものをまとめた。その文学的出発となった青春の思い出から、放浪生活、近況を淡々とした調子でつづっている。 冒頭の「青春時代」では、師と仰ぐ横光利一への思慕、親友の檀一雄、太宰治らとの交遊ぶりを描くが、小説を読むようなおもしろさである。若さによる自由奔放、無頼の日々をあざやかにうかびあがらせ、今は亡き友への愛惜がにじみ出ている。十年ごとにくりかえされた放浪生活の果てに文学に戻ったいきさつを述べた「私にとって文学とは何か」にしても、「極限としての境界にあって、死の相をとらえ」ようとする意図が新鮮なひびきをもって伝わる。六十一歳にして芥川賞をとった作者の文学求道は一高中退時から始まっていたのである。 =福武書店 一、五〇〇円= |
(福武書店B6判、四〇〇ページ一、五〇〇円) |
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