(文 森富子)
Part 15

やよい荘の窓辺にたたずむ森敦(63歳)。
 撮影は、田沼武能氏。サンテレフォトの封筒を使用して、13枚の写真が送付された。消印は50.5.23とある。
 書斎での執筆姿、雑談する表情などをとらえている。窓外に見える竹林が好きで、エッセイに幾度も書いた。この四畳半の書斎で小説『月山』を執筆、取材や打ち合わせをした。談論風発を好み、来る人拒まずで、多くの客人が来訪した。卓袱台は、東大寺に奇遇したときに買い求め、放浪40年のあいだ、食卓に、執筆に、読書にと重宝に使い分けていた。
やよい荘の書斎での森敦(63歳)。
 前掲の写真と同じく、田沼武能氏撮影。ゆらゆらと立ち上る紫煙が美しい。ヘビースモーカーで、ほとんどの写真の指には煙草が挟まれている。火をつけて1、2回吸ったあとは、紫煙をくゆらしていた。
やよい荘近くの竹林での森敦(63歳)。
 前の2枚と同じく、田沼武能氏撮影。調布市の布田駅近くでありながら、当時は駅前に一軒の酒店があるほか、竹林や田畑の多い田園地帯であった。
やよい荘の書斎での森敦(63歳)。
 秋山庄太郎氏撮影。秋山氏が撮り続けてまとめた『作家の風貌一五九人』(美術出版社、昭和53年刊)に、「月山 この山にして この広大なる 山ふところがあるなり」の書とともに収められている。
 三時間ほどかけての撮影に感心した。四畳半の書斎のあちこちにスポットライトをセッティングすると、秋山氏はカメラを膝の上に置いて、どっかと座って雑談を続けた。カメラは卓袱台に隠れて見えないが、雑談の合間にパチリとシャッターを切る。そのタイミングのよさ、シャッターを切る素早さ、カメラを持ち上げる両腕の自然さ、撮影する枚数の多さに驚嘆し、森敦は「道を究める人は違う」と言っていた。
やよい荘の書斎での森敦(64歳)。
 サンケイ新聞の野村記者撮影。文化部記者の影山勲氏がインタビューしたときの写真の一枚。サンケイ紙上の記事「このごろ 森敦さん」(昭和51年9月4日夕刊 HP「森敦インタビュー、談話」参照)に掲載された写真とは異なる。
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