051 二枚目から雰囲気のある三枚目に変化する男の魅力
出典:ヤングレディ 七月二十七日号 昭和51年7月27日
 植物学的にいうと、たとえばレモンでも夏ミカンでも、デコボコのある物がいいといいますね。外の皮はデコボコでも中身は味がある──アンチ二枚目、つまり三枚目もそういうことじゃないだろうか。
 最近はブ男というのが少なくなりました。みんな背も高いし、カッコよくなってきて、伸び伸びしている。だが、それだけ平凡化してきたともいえるんです。だから、かえってその上でもいい、下でもいいからハミだしているほうがトクをするってわけです。上にしろ、下にしろ個性として生かせばいいんです。
 人間というのは、バランスがとれすぎていると個性が出ないものなんで、二枚目とか美男子といわれる人は個性があまりないし、バイタリティーが出ないといえます。
 人が人と付き合う──たとえば社会的な人間関係や夫婦関係、恋愛関係は、全部、最初は顔がものをいうんだけれど、そのあと円滑にゆくのはその人が持っている雰囲気、本人がつくりだす雰囲気が親しみやすいからなんです。
 そして、その雰囲気というのは、ブ男のほうが個性的な分だけ魅力的に相手に感じられるはずなんですよ。人を尊敬させたり、近づけたりするのには雰囲気が大事なんで、立派な人だなと感じさせるとか、おもしろい男性だなと感じさせるような魅力をかもしだすには、ブ男のほうが有利ですよ。
 というのは、美男子がおかしなことをすると、おもしろいと思うより醜さが先に立って人に不愉快な気を起こさせるものです。また、あまり美男子が威厳をつけすぎても、気障すぎてイヤ味なものだし、浮きあがってしまうんです。
 ところで、ブ男にとって大事なことといえば、これはすべての人にいえることなんだけれど、とにかく一つのことをやり抜くことです。勉強しつづけることです。
 男は何かをしているときがいちばん美しいというでしょう。女性が男性を好きになるというのは、何でも知っているから好きになるんじゃない。一つのものに賭けているけれど、ほかのところでは抜けている、バカじゃないかと思うくらいのほうが、魅カを感じるし好きになるんです。
ほんとうは、女性はもっとも美しいものには拒絶反応を起こすはずなんです。そういう美しいものには嫉妬心を燃やすからなんだけれど、反対に、“バカみたい”と思うような男性には親しみやすいから好意をもつようになります。
 たとえばダウン・タウン・ブキウギバンドの宇崎竜童君。彼はサングラスをとると、ハンサムな顔をしているんです。それがあの服装でサングラスをかけるとグッと三枚目になるんですね。
 二枚目から三枚目へ、わざと変化をつけて魅力的になった男といえます。
男にとって大事なのは顔だけじゃありません。ただノッペリしたハンサムじゃダメなんです。何かを感じさせる無骨な部分をもったブ男じゃないと男の魅力は出ないと思います。
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