046 裏表紙
出典:東京新聞 昭和51年3月24日(水)
 「組曲 月山」というLP(キングレコード・二三〇〇円)が、このほど、発売された。森敦さんの第七十回芥川賞受賞作『月山』から文章を抜粋し、フォーク調の音楽を付けて、十曲にまとめたものである。
 文学作品が音楽化された例は、フランスならポードレールの『悪の華』などが有名で日本では最近、高見順の『死の淵より』が組曲となって演奏され、話題となったが、それほど多いわけではない。
 森さんの場合は、広告代理店に勤めている新井満さんという二十五歳の青年が、森さん宅を訪ねた折、『月山』の一節をギターの伴奏で即興的に歌っで聞かせたのがきっかけ。その時の印象を、森さんは「想い出のごとくどこかで聞いたような歌詞だと思いながら」も、「もはや記憶の彼方に忘れ去ろうとしていたあの月山が、彷彿(ほうふつ)として蘇(よみがえ)るのを覚えた」としるしている。
 結局、作曲術などトンと知らない新井さんが、猛勉して作曲し、歌い、レコードの誕生とはなったようである。
↑ページトップ
森敦関連記事一覧へ戻る
「森敦資料館」に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。