055 優雅な舞い たっぷりと 坂本晴江舞踊会
出典:奈良新聞 昭和53年8月28日(月)
 日舞坂本流家元・坂本晴江舞踊会(奈良新聞社後援)が、二十七日正午から、奈良市登大路町の県文化会館大ホールで催され、坂本さんはじめ社中のお弟子さんたちの優雅な舞い姿が、満員の観客席を魅了した。
 番組第一番は、芥川賞作家森敦さんの受賞作を坂本さんが振り付けし、今春、京都南座での第二十回最高名流舞踊大会で京都芸術祭賞を受賞した創作舞踊「月山」。特殊な舞台装置を背景に、原作に描かれた幽玄の世界が見事に舞踊化され、坂本さんの舞姿を見るためにわさわざ来寧した森さんも「原作の口語体をそのまま新内(しんない)にとり入れるなど、苦労されたと思うが、舞台は予想以上によかった」と絶賛。
 この舞踊会は、東大寺の昭和大修理奉賛を兼ねて開かれたものだが、若いころ奈良に住み、東大寺に身を寄せていた森さんは「(舞踊化された)私の作品が東大寺の奉賛を兼ねて披露されたことに因縁を感じます」と満足げだった。
 このほか、同じく森さんの小説「鳥海山」に題材を求めた創作新内「鴎(かもめ)」をはじめ坂本晴江さん、明江さん親子の地唄舞、社中の長唄、常磐津などが次々に披露され、観客席からは大きな拍手が起こった。会場を訪れ、あいさつに立った清水公照東大寺管長は「日舞には不案内な私ですが、ありがたく拝見させていただきました。工事は三分の二の工程を終え、五十五年秋の落慶を待つばかりですが、これを機会により一層の関心とご協力を」と訴えた。
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