060 今夜からすぐ役立つ 男の料理教室 「ナスのサラダ」
出典:日刊ゲンダイ 昭和56年8月5日
☆味自慢☆ 「昔は10年働いて10年遊ぶのが主義。48年に芥川賞をもらうまでは住まいも転々としてジプシーみたいな生活だったから、料理なんてものは、極端なことを言えば腹を満たしてくれればそれでよかった。ただし、今でもそうですが、酒だけはおいしく飲みたい。そのためにはサカナが必要で、なにをさしおいても悪戦苦闘、見よう見まねでサカナの作り方を覚えた。こんな酒飲みが作るのだから見栄えはよくないけど、味の方は評判いいのよ。第一、ナスの場合、いくらきれいでも皮つきのまんまでは、味がしみ込まんでしょ。うん、品質本位ってとこだね。冷蔵庫に冷やしたヤツで一杯やれば、暑さも汗も吹っ飛んじゃう」(森さん)
☆材料☆ ナス3本に対し、ニンニク一片、、ショウガ同量。しょうゆ、ゴマ油、酢、砂糖各適宜。「この分量で、だいたい2人分のサカナ。でも取り置きがきくので、たくさん作って翌朝のごはんのおかずにしたって十分いけます」
☆作り方☆ ナスを水洗いし、蒸し器で丸ごと蒸す。竹串で刺してみて、スンナリ通るぐらい柔らかくなったら、取り出して熱いうちに皮をむく。
「これが大変。熱いからなかなかむけなくて。で、苦肉の策。きれいなフキンでナスの皮をつかみ、ヘタの方から先っぽにむけてひっぱると、うまくむける」
 むいたら指でだいたい6等分ぐらいに身をむしり、ラップをかけて冷蔵庫で冷やす。
 この間に、ニンニク、ショウガをすりおろし、ゴマ油3に対し、酢が1の割合にしょうゆ、砂糖少々を加え、ドレッシングを作る。これも冷蔵庫で十分冷たくし、食べる直前に、サッとかける。
☆料理のコツ☆ 「皮をむくのは大変だけど、ナスは細めで小ぶりのものを選ぶこと。太いものは水っぽいし、タネが多くておいしくない。それと僕は医者に止められているので入れませんが、ドレッシングにラー油を少々落とすとピリッとしてうまい」
☆評判☆ 「敦ちゃんは全く人を驚かしたりするのが好きだからね。最初“冗談だろ、料理なんて”と思ってたら、本当に作ったからビックリ。味? 酒飲みが作るだけあって、サカナとしては申し分ない」(作家・小島信夫さん)
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