069 芭蕉にちなむ
出典:中日新聞 伊賀版 昭和58年8月20日(土)
 芥川賞作家の東京都新宿区市谷田町、森敦さん(七一)がこのほど、芭蕉にちなんだ句を自書して上野市丸之内、芭蕉翁記念館(山本茂貴事務長)に贈呈した。十月十二日の芭蕉祭を前に同記念館が要請し、森さんが「芭蕉を愛する市民のみなさんのために」と快諾して贈った書は表装して掛け軸にし、十月十一日の芭蕉祭前夜祭から一カ月間、同記念館で一般に披露する。
 森さんはことし六月中旬からNHK教育テレビで五回にわたって放映した「教養セミナー・ふるさと歴史紀行 森敦おくのほそ道行」に出演した。この放送が、上野市で月一回開かれている芭蕉文学講座で話題になり、七月末に山本事務長が手紙を出して芭蕉祭への出席を依頼する一方、芭蕉にちなむ俳句をお願いした。
 森さんの句は前詞に「蕉翁が道尋ね 終わりて湖畔に宿す」とあり「子等の漕ぐ声雲に消え湖となる」の俳句が続いている。
 縦一三五センチ、幅五六・五センチの上質唐紙に墨書してあり、芭蕉祭までに表装して掛け軸にする。十一日から同記念館で開く「芭蕉五庵展」で特別展示する予定。
 山本事務長は「この句は、芭蕉の人間性、文学の大きさや深さを湖にたとえたものだと思います。伊賀地方にゆかりのある作家、横光利一とも親交があったそうなので、ぜひ芭蕉祭に出席していただきたいと願っています」と話している。
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