077 森氏と新井満氏に
    野間文芸賞授賞式
出典:西日本新聞夕刊 昭和62年12月21日(月)
 野間文芸賞の授賞式がこのほど東京・丸の内の東京会館で行われ、第四十回野間文芸賞が「われ逝くもののごとく」の森敦さん(長崎市生まれ)に、第九回野間文芸新人賞が「ヴェクサシオン」の新井満さんに贈られた。
 「われ逝くもののごとく」は四百字詰め原稿用紙で約千五百枚。選考委員の安岡章太郎さんは「選考に臨むまでが大変だった。しかし最初の一行目から最後まで動かしがたい実在感に満ちた名作だ」と評した。
 これに対し森さんは「読んでもらっただけでも感謝します。もう七十五歳ですから、これで終わりかもしれないと思うと、つい力が入って筆圧が高くなり、手首や指先がボールペン症候群になった」と、ユーモアをまじえながら、孔子の時間観と仏教の彼岸思想をこの小説で描いた、と背景を話した。
 新人賞の新井さんはシンガーソングライターでもあり、かつて森さんの小説「月山」を題材に歌を作ったことがあるが「先生におだてられて小説を書き始めた。一緒に授賞式に出席できるのも何かの縁でしょう」とあいさつした。
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