092 新人育て、「月山」で芥川賞 森敦氏が死去
出典:日本経済新聞 平成元年7月30日(日)
 「月山」などで知られる芥川賞作家の森敦氏(もり・あつし)が二十九日午後五時四
十二分、脳血栓のため東京都新宿区の東京女子医大病院で死去した。七十七歳だった。自宅は新宿区市谷田町三ノ二〇。告別式の日取りなどは未定。
 旧制一高を中退後、菊池寛に見いだされ、横光利一に師事。二十二歳のとき小説「酩酊船」を新聞連載するなど文壇に華々しくデビューした。太宰治、檀一雄らと同人誌「青い花」を創刊したが、その後は作品を発表せず、全国各地を転々とする放浪生活に入る。沈黙を続け、幻の作家といわれたが昭和四十八年、四十年ぶりに発表した小説「月山」で第七十回芥川賞を受賞。当時、六十一歳の還暦を過ぎた最高齢受賞として話題を呼んだ。
 沈黙時代にも当時の新人作家たちの作品を読み、的確な指摘をして、小島信夫、三好徹両氏ら多くの作家たちを世に送った。
 主な著書に「鳥海山」「意味の変容」「われ逝くもののごとく」「私家版聊斎志異」などがある。
 二十九日午後四時すぎ、自宅で倒れ、救急車で東京女子医大病院に運ばれた。高血圧症で最近、厚生年金病院を退院したばかりだった。
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