095 一即一切 一切即一 森敦対談集
   文学と人生を語り合う
出典:産経新聞 夕刊 昭和63年9月19日
 作家の小島信夫、新井満、瀬戸内晴美、石毛春人、国立歴史民俗博物館教授・山折哲雄さんの五人と、自らの文学、人生を語った対談集である。
 森さんは、来る手紙には必ず返事を書いていたが、友人もしだいに亡くなったので、天
に向かって手紙を書いた。それが芥川賞受賞作『月山』であり、だから「です、ます」調になった、という。
 『月山』は庄内から和紙の蚊帳(かや)の中へと微塵に至る世界、つまり金剛界曼荼羅を描いた。十年後の作品『われ逝くもののごとく』は、逆に加茂という微塵の世界から外へ広がる胎蔵界曼荼羅を描いた。『月山』が一即一切ならば、『われ逝く─』は一切即一であり、論理学でいう対偶の関係にある、と語る。放浪中のエピソードも面白い。
 (法蔵館・一五〇〇円)
 
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