097 ブック・トレンド ◆◆“新たな道”をたどる |
出典:読売新聞 昭和63年9月13日(火) |
数年前、作家の森敦さんは、NHKの「森敦おくのほそ道考」に出演した。月山はじめ芭蕉が通った道すじに、住んでいたことが多かったからである。 折から芭蕉三百年祭を迎え、各地で講演を依頼され、ただ住んでいたではすまされなくなって、本格的に「おくのほそ道」を研究した。「われもまた おくのほそ道」(日本放送出版協会、一五〇〇円)は、その成果であって、「おくのほそ道」を起承転結に分け芭蕉が目指した紀行文学の枠組みを超えた新しい俳文芸として、「おくのほそ道」を再生している。 森さんは「芭蕉が俳諧(はいかい)連歌を次々と対応させて、構成を組み立てているのが面白い。また太平洋側は源義経、日本海側は木曾義仲のあとをたどり、全編のテーマは仏教の会者定離でくくっています。たくさんの死せる者に会うようでうれしい、と喜んでいます。私の小説作法にも通じています」という。 |
↑ページトップ |
書評・文芸時評一覧へ戻る |
「森敦資料館」に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。 |