048 わが青春 わが放浪 森 敦著 
出典:朝日新聞 昭和57年8月23日
 放浪を愛し、小説「月山」で芥川賞を受けたとき、六十歳を超えていた。本書はこの特異な作家の全随想を集めた。青春のころ檀一雄、太宰治らと交わり、奈良で思索の月日をすごし、酒田、月山に移る。青春と放浪の中で母、妻、妻の母についてしるした文章や、文壇交遊記などが胸をうつ。引用された論語の一節「甚だしいかな、わが衰えたるや。久しいかな、われまた夢に周公を見ず」がしっくりなじむような格調をもつ。
(福武書店・ 一、五〇〇円)
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